【人間にとって成熟とは何か】
インフォメーション
題名 | 人間にとって成熟とは何か |
著者 | 曽野 綾子 |
出版社 | 幻冬舎 |
出版日 | 2013年7月26日 |
価格 | 836円(税込) |
「もっと尊敬されたい」
この思いが自分も他人も不幸にする。
人はみな平等に年を取るが、しだいに人生がおもしろくなる人と、不平不満だけが募る人がいる。
両者の違いはいったい何か。
「憎む相手からも人は学べる」
「諦めることも一つの成熟」
「礼を言ってもらいたいくらいなら、何もしてやらない」
「他人を理解することはできない」
「人間の心は矛盾を持つ」
「正しいことだけをして生きることはできない」
等々、自分を見失いがちな人が、後悔しない生き方のヒントが得られる一冊。
引用:Amazon
ポイント
- この世のことは、善でもなく悪でもなく、多くの場合、その双方の要素を兼ね備えている。
- いいだけの人生もない。悪いだけの生涯もない。
- 人はあらゆる状況の中で、あらゆる感覚を集結して、自分の生きる意味を探る。
サマリー
はじめに
人はみな平等に年を取るが、次第に人生が面白くなる人と、不平不満だけが募る人がいる。
両者の違いは何だろうか。
周りに振り回され、自分を見失いがちな人に、世知辛い世の中を自分らしく生き抜くコツを伝えていく。
正しい事だけをして生きることはできない
全てのことに善と悪の両方がある
人間は誰でも、自分で自分を救わなくては生きていられないのだから、どんな悪い境遇になっても必ず自分を活かす要素を見つけるものではないだろうか。
例えば病気になって入院するのは不運に決まっているのだが、「これも人生で必要な体験と時間だったのかもしれない」と考える。
現に私の作家の友人は、先日足を折って入院した。
そこで立派な文芸的評伝を書き上げた。
私も年を取ったことについての意味のようなものを感じている。
肉体的能力は明らかに落ちてくるだろうが、長く生きて来た分だけ、知的な蓄積が多くなるのは普通なのである。
私も全く人並みにそれを感じている。
この世のことは、善でもなく悪でもなく、多くの場合、その双方の要素を兼ね備えている。
善だけの行為とか、悪だけの結果、というものはむしろ稀であって、そういう準枠すぎる生き方・見方をする人と私はついぞ仲良くなれなかった面はある。
人間の心は矛盾を持つ
現在でも私が日本で感心するのは、田舎のJAの人気のないオフィス前などにも置いてある飲み物の自動販売機が、夜の間にも奪われないことだ。
多くの外国では、あんな「宝の山」を放置する泥棒はいない。
改めて言うが、私は泥棒も嫌だ、不公平な身分格差のある社会も嫌だ。
しかし、そもそも矛盾を含んでいる人間の心には、そうでない部分もあるのである。
人は公平、幸福、順調が何より好きだが、心の一部では、そうでもない要素も求めている。
つまり不公平であることは十分知りつつ、時には桁外れの豪華な暮らしや、家柄の故に不当に裂かれる悲恋も好きなのである。
不純な人間の本質を理解する
いいだけの人生もない、悪いだけの人生もない
知人の息子が、登校拒否になった時、私はそれを大した悲劇だとは思わなかった。
彼は、立派に大人の話し相手ができる子だったのである。
こんな優秀な子が落ちこぼれなどであるわけがない。途中を省いた報告をすれば、彼は立派に立ち直り、立派な社会人になった。