【きみのお金は誰のため】
インフォメーション
題名 | きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」 |
著者 | 田内 学 |
出版社 | 東洋経済新報社 |
出版日 | 2023年10月 |
価格 | 1,650円(税込) |
元ゴールドマン・サックスのベストセラー作家が描く、青春「お金」小説!子どもでも楽しめて大人の教養になる!ラストで泣ける物語!
◆本書のあらすじ◆
ある大雨の日、中学2 年生の優斗は、
ひょんなことで知り合った投資銀行勤務の七海とともに、
謎めいた屋敷へと入っていく。
そこにはボスと呼ばれる大富豪が住んでおり、
「この建物の本当の価値がわかる人に屋敷をわたす」と告げられる。
その日からボスによる「お金の正体」と「社会のしくみ」についての講義が始まる 。
プロローグ 社会も愛も知らない子どもたち
第1章 お金の謎1:お金自体には価値がない
第2章 お金の謎2:お金で解決できる問題はない
第3章 お金の謎3:みんなでお金を貯めても意味がない
第4章 格差の謎:退治する悪党は存在しない
第5章 社会の謎:未来には贈与しかできない
最終章 最後の謎:ぼくたちはひとりじゃない
エピローグ 6年後に届いた愛
引用:東洋経済新報社
ポイント
- お金には価値がない。その証拠に、毎年、30兆円ものお金が燃やされている。
- お金は1人ひとりにとっては価値があるが、全体では価値が消える。
- 価値を感じていても、使うかどうかは本人次第と言える。
サマリー
プロローグ
「しょせんは10キロの紙切れや」
その男は、積み上げた1億円の札束の山をボンとたたいてそう言った。
中学2年生の佐久間優斗(さくまゆうし)は、自分の手のひらが汗でしめっていくのを感じた。あまりに現実離れした光景に、映画かネット動画でも観ている感覚になる。
お金はずるい。だからこそ、自分のお金を儲けたい。それが優斗の素直な気持ちだった。
この男に出会ったとき、お金のもうけ方を教えてもらえると思っていた。ところが、彼が語り始めたのはお金の正体というわけのわからない話。
妙なことに巻き込まれたとは思ったが、行先のわからない特急列車に飛び乗ったような興奮を覚えた。
「お金自体には価値がない」
ボスと呼ばれる男が、お金の3つの謎を教えてくれるという。
だけど、「お金には価値がない」という1つ目の謎の答えにすら、まだたどり着けていなかった。
「どこ、寄り道していたのよ」
厨房から母が顔を出してきた。
客がいる手前、声のトーンを抑えていたが、明らかに不機嫌そうだ。
錬金術師の屋敷でお金の話を聞いていた。と正直に話しても信じてもらえないだろう。
「ビール、もう1本ちょうだーい」という客の注文に助けられた。
母がビール瓶のフタを開けているすきに、厨房の横の階段を駆け上がり、住居のある2階へと駆け込んだ。
自分の部屋に入ると、疲れがどっと出てきた。
優斗はベッドに横たわると、仰向けになって右手を見つめた。
さっきの感触がよみがえる。
つい2時間前、初めて札束を触ったときのことを優斗は思い返した。