【健康寿命を延ばす 高齢者の栄養と食事】
インフォメーション
題名 | 健康寿命を延ばす 高齢者の栄養と食事 |
著者 | 成田 美紀 (監修), 検見﨑 聡美 (著) |
出版社 | 池田書店 |
出版日 | 2018年5月25日 |
価格 | 1540円(税込) |
近年、高齢者の「低栄養」が問題になっています。
歳をとるにつれて「かむ力・飲み込む力」が弱くなり、
入れ歯になって食べづらくなる人もいて、食事量が減ったり
食欲が低下したりすることが「低栄養」の原因です。
また、「粗食がいい」というのも間違った考え方で、
むしろ高齢者は、積極的にタンパク質(肉や魚)を摂取し、
必要な栄養素をバランスよくとることが大切です。
やせている人より少し太めの人のほうが長生きしているという
調査結果もあります。
本書では、高齢者の体の変化、必要な栄養素、かみやすい・飲み込みやすい
食事の工夫、かむ力・飲み込む力をつける体操など、
低栄養を防ぐための基礎知識をレシピとともにわかりやすく解説しています。
栄養素は細かく計算するのではなく、1日のうちに10種類の食品群
(肉、魚介類、卵、大豆・大豆製品、牛乳・乳製品、緑黄色野菜、
海藻類、いも類、果物、油脂)をとることを目標にし、
低栄養を防ぐ提案をしています。
後半では、栄養や食べやすさを工夫したレシピを紹介しています。
また、本書掲載の「虚弱(フレイル)予防チェックシート」では、
栄養や体力、生活環境に関する項目があり、
今の自身の状況を確認することができ、健康寿命を延ばすことに
役立つものとなります。
引用:池田書店
ポイント
- 健康寿命とは、健康上の問題がない状態で、日常生活を過ごせる期間のことをいう。日本人の平均寿命は延び続けている一方で、健康寿命は平均寿命より男性で約9年、女性で約12年も短いことがわかっている。
- 75歳以上の高齢者が要介護状態になる原因は、脳卒中のような病気よりも、低栄養などからの心身の活力の低下が原因となる割合が高くなっているのだ。
- 高齢期は体重が減って「低栄養」にならないための食生活をすることが大切だ。そのためのポイントが6つある。
サマリー
健康長寿はどうすれば手に入る?
「健康寿命」という言葉を知っているだろうか。
健康寿命とは、健康上の問題がない状態で、日常生活を過ごせる期間のことをいう。
日本人の平均寿命は延び続けている一方で、健康寿命は平均寿命より男性で約9年、女性で約12年も短いことがわかっている。
これは、支援や介護を必要とする期間が、平均して9〜12年あるということだ。
東京都健康長寿医療センター研究所では、健康長寿の条件を解明することを目的に、1000人以上の高齢者を8年間にわたり調査した。
何が健康長寿に影響したかを調べた結果、次の3つが浮かび上がった。
①栄養状態がよい(体に必要な血液中のアルブミンやコレステロールの値が高い)。
②筋力が強く、歩行速度が速い。
③仕事や人とのつき合いなど、社会的な活動をしている。
健康で長生きするには、栄養面や体力面、社会面からの「老化予防」が重要なのだ。
高齢者がなりやすい低栄養とは?
低栄養が続くと要介護状態に
低栄養とは、健康な体を維持して日常生活を送るうえで必要な栄養素がとれていない状態をいう。
特に不足しているのはエネルギーとタンパク質だが、低栄養になると鉄や亜鉛、ビタミンAやDなどの脂溶性ビタミンも不足することが多いので、全体的に栄養素が不足していると考えた方がよい。
低栄養が長く続くと、体力や免疫力が低下して感染症になりやすくなったり、皮膚が弱くなり傷ができやすく、低タンパク貧血症(むくみ、貧血など)を起こしやすくなったりする。
エネルギーやタンパク質が食事からとれなくなると、体は筋肉内に蓄えられているタンパク質を分解し、足りない分を補おうとしてしまう。
しかも、高齢者は栄養から体を作る力よりも、体の組織を分解しエネルギーにしようとする働きのほうが、やや優勢になり、「サルコペニア(筋肉減少症)」という筋力や筋肉量が減少した状態になるのだ。
筋肉量の減少は必然的に基礎代謝量の低下につながり、一日のエネルギー量が減り、食欲が低下する。
さらに、筋力が低下すると疲れやすく活動量が減り、ますます食欲が低下して低栄養が進むという悪循環に陥ってしまう。
75歳以上の高齢者が要介護状態になる原因は、脳卒中のような病気よりも、低栄養などからの心身の活力の低下が原因となる割合が高くなっているのだ。