【派遣添乗員ヘトヘト日記――当年66歳、本日も“日雇い派遣”で旅に出ます】
インフォメーション
題名 | 派遣添乗員ヘトヘト日記――当年66歳、本日も“日雇い派遣”で旅に出ます |
著者 | 梅村 達 |
出版社 | 発行 三五館シンシャ/発売 フォレスト出版 |
出版日 | 2020年2月 |
価格 | 1,430円(税込) |
添乗員自身がなげく“日雇い派遣”
曖昧模糊とした添乗員の世界
添乗員の業界というのは、じつに曖昧模糊としている。
ツアーの参加者の多くは、旅行会社の社員が添乗員をしていると思っている。
しかし、そういうケースはほとんどない。
旅行会社の社員が添乗員になるケースでもっとも多いのは、
修学旅行である。
いずれにしても、
そうした社員が添乗業務を行なうのは、
全体の中でも、非常に稀なケースである。
では、一番多い添乗員というのは、
どういう人たちなのであろうか?
それは添乗業務を請け負う派遣会社に所属している人たちである。
添乗員の業界というのは、そういう派遣の人たちなしには成り立たない。
かくいう私もその一人である。
引用:フォレスト出版
ポイント
- 私は軽い気持ちで添乗員の世界に足を踏み入れたが、いざ始めてみると、これがまた私には向いたところがあった。何より新鮮だったのは、人に喜びを提供するサービス業だということである。
- 添乗員として仕事を続けている人は、打たれ強い人ばかりである。ある程度経験を積めば、クレームにも慣れてくるようだが、この打たれ強さに加え体力さえあれば、添乗員の基礎はできたと言っても過言ではない。
- 新聞の広告などを見て団体旅行に参加する人は、圧倒的に高齢者が多い。一般的に年を重ねるとトイレが近くなるので、ベテランたちのツアーでは普段からトイレ、トイレと忙しいのだ。
サマリー
派遣添乗員、本日も苦情あり
腹痛での綱渡りツアー
どうも腹の調子が悪くて夜中に目が覚める。
相当ひどい下痢で、寝床とトイレは何度も往復する。
この仕事は、当日、急にピンチヒッターを頼むのは、よほどのことがない限り無理だ。
あれこれと考え、どうしたものかと迷っているうちに、刻々と家を出る時間が迫ってきたので出かけることにした。
同業者の命取りとなった大失敗はいろいろと耳にしている。
ある添乗員は、忘れ物に気づいて発車間際の新幹線から降りた。
しかし、その間にドアが閉まったので、焦った添乗員はドアにしがみつき、列車の出発を遅らせて大問題になった。
別の添乗員は、修学旅行中に泣いていた女子生徒を励まそうと、肩に手をやり声をかけたら、「添乗員からセクハラされた」と学校から訴えられ、これまた大問題に発展した。
いずれの添乗員も、業界から去って行かざるを得なくなったのである。
なればこそ、今日の一番の仕事は何事もなく無事にツアーを終えること。
私はその日、危機一髪の体調に折り合いをつけながら、「寝た子」を起こさぬように仕事をしていった。