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【夜明けのはざま】

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インフォメーション

題名 夜明けのはざま
著者 町田そのこ
出版社 ポプラ社
出版日 2023年11月8日
価格 1,870円

登場人物

・佐久間真奈
 家族葬専門葬儀社で働く。

・江永なつめ
 真奈の友人。作家。

・愛奈
 真奈の姉。

・純也
 真奈の彼氏。

あらすじ

※一部、ネタバレを含みます。

※本記事は要約記事ではなく、自身の言葉であらすじ及び感想を書いたものです。

姉と母の同居

愛奈が母の実家で、母と同居すると言う。

定期検診で初期の子宮ガンが見つかり、子宮摘出手術を受けることになった。

バリアフリーにするにはリフォーム代もかかるため、真奈はお金を出す。

大学を卒業してすぐに高校時代からの恋人と結婚した愛奈は、四人の子どもを産んだ。

新婚当時から住んでいる2LDKのマンションでは、さすがに手狭になってきたのだろう。

利害一致、そんな言葉が真奈によぎった。

真奈の仕事となつめの仕事

真奈の仕事は家族葬専門の葬儀社で葬祭ディレクターとして働いている。

古民家をリノベーションした斎場で、一日一組限定。

故人との最後の時間を、温かな空間で、大事なひとたちと静かに過ごしてください、というコンセプトのもとに運営されている。

なつめの本業は作家。

大学二年生のときに書いた小説が新人文学賞を受賞して、華々しくデビューした。

からだを売って生計を立てる母と、そんな母を憎む娘の、痛々しい衝突の日々を描いた受賞作は、新進気鋭の映画監督の手によって映画化され、いっときはメディアまで露出していた。

しかし二作目以降は揮わなかった。

酷評が続き、仕事は減り、いまでは地元の小さな情報誌で月一本のエッセイがあるだけ。

本業だけで生活できなくなったなつめは、風俗で働いている。

なつめの死

なつめは常連客だった男と心中した。

手書きの遺書を残していて、生きることに疲れたので自分の意志で死を選びます。

でも自分で命を絶つのは怖いので、私を殺してくれるひとにお願いします、とあった。

その遺書に、友人の勤めている葬儀社で葬儀をしてほしいと書かれていた。

真奈はできません、と言うつもりだった。

友人の葬儀など、どうして担当できるだろう。

『江永なつめさん死去。勤務先風俗店の客と心中か』なつめの死がニュースになっていた。

文章はどこまでも事務的で、冷酷で、そして下衆な言葉で締められていた。

車寄せのほうで車が停まる音がし、なつめが到着した。

真奈は反射的に駆け出した。

なつめの頬に触れると不思議と覚悟が決まった。

わたしが、なつめを見送る道を作る、と。

なつめは、わたしがここで待っていると信じて、来てくれた。

自分の最後をわたしならきちんと飾れると、願ってくれた。

なつめを前にして、真奈はそれをひしと感じたのだ。

葬儀業の仕事への偏見

「そろそろ結婚しませんか」と純也が真奈にプロポーズをした。

しかし、いまの仕事は辞めてほしい、死体を触る仕事をしなくてもいい、と言う。

真奈の仕事をそんな風に思っていたことに、真奈はショックを受ける。

そのことを母に相談すると、そう思われても仕方ないとため息を吐いた。

誰かがしないといけない仕事だろうけど、娘にはやってほしくなかった、と言う。

誰にも迷惑をかけずに、真奈の稼ぎで生活している。

税金を滞納したこともないし、ボーナスのときには募金もする。

姉たちが暮らす予定の家に出すお金は、もちろん真奈が葬儀業で稼いだお金だ。

しあわせの両立

純也のプロポーズは保留にしたままだ。

別れたいのかと問われると、別れたいとも思うけど、結婚したい想いが真奈の中にあった。

ありきたりな理由かもしれないが、誰かと支え合って暮らすって心強いなと思う。

ひとは弱っているとき、誰かが傍にいてくれるというそれだけで安堵するものなのだ。

ひとりでずっと生きていきたいわけではない。

結婚するなら純也がいい。

好きだなと思う瞬間もある。

結局のところ、不満を抱えながらも別れを選択できないのは純也と幸福な選択を重ねてきて、これからもそうありたいと願っているからだ。

真奈が思っていたよりも深く純也のことを大事に感じている。

純也のしあわせのひとつは、真奈が仕事を辞めれば叶う。でももしいま辞めてしまえば、真奈は真奈でなくなってしまうような気がするのだ。

もっと向き合いたい、できることをしたいと思った仕事を納得いかないまま辞めることは、真奈を中途半端にしてしまう。

なつめが己の葬儀を前に真奈に問うてくれた意味が、なくなってしまう。

嫌悪ではなく恐怖

今後のことを話し合いたい、と純也に言われ真奈とふたりで出かける。

1時間ほど走ったのち、車が止まったのは大学附属病院だった。

純也の母は難病を患っており、純也が物心ついたときには、いつもこの大学病院に入院していたと言う。

よく母のお見舞いに来て、たくさんの管に繋がれた母を見て、死ぬのかなと感じたら、病室にもいられない。

幼い純也は何度も母の病室から逃げて、迷子になった。

そのときに地下があることに気付いた。

探検だと思って下りていくとどこか薄暗くて、ひんやりしていた。

そこは霊安室で遺体があった。

初めて見る人間の遺体に、驚いて、怖くて、幼い純也は立ち尽くした。

そのとき遺体の手が胸から落ちた。

ベッドの端からだらっと落ちた左手が、ゆらゆら揺れ始めた。

純也を呼ぶ、みたいに。

純也はどうして葬儀業を嫌うのか、真奈に告白してくれた。

純也が抱いていた感情は、『嫌悪』じゃない。

『恐怖』だったのだ。

純也は弱みをひとに見せたくないひとだ。

見せたくなかった弱い部分をさらけ出して、真奈と向き合ってくれる。

どんな理由よりも、納得のいく理由だった。

母の病気

愛奈から母のガンが転移していると電話があった。

初期の子宮ガンと聞いていたが、腹膜に散っているという。

母が独身の真奈にいらない心配をかけたくないから言うなと、愛奈は口止めされていた。

愛奈と母が同居をしたのは、母のお世話をするため。

いまはまだ命に関わるほどではないが、これから手術だとか抗がん剤治療だとか重なるから、お金の援助をしてほしいという電話の内容だった。

真奈は、ひとりで生きていける。

誰にも迷惑をかけていない。

胸を張って言い続けてきた。

それを理解してくれない母や愛奈に苛立っていた。

でも母が病気になったことも知らされずに、気を遣われていた。

自分ひとりで生きていけると勝手に慢心していた。

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